夜更けまでと夜更けからの現在地すれちがうもちきりやわんさか
/カリフォルニア檸檬『み未して視みうつつひみづ』
抽象的な次元の移動感覚をみせてくれた。
しりとりと逃水いくばくかの現金
/大塚凱『ねじまわし第3号』
逃水、で想起される季節感に「しりとり」と「いくばくかの現金」っていう絶妙にダルそうなものを組み合わせるのすごいわかる(勝手にわかるな)。
それはそう 生活が見えない人を好きになっても無駄なんだけど
/豊冨瑞歩『展開』
こわすぎ。
輪っかになった絆創膏がお風呂場の排水口に流されて行く
/花山周子『外出7号』
「輪っかになった絆創膏」を見逃さない……のはすごい。
大きく磨き離れて見てはまた拭いて 見上げて磨きあげられてゆく
/浪江まき子『波長創刊号』
シンプルに、字空けで視点切り替わるの気持ち良い。
路地の奥くろねこが消えたその先に”トゲヌキマス”の低い看板
/今哀子『メルクマール・メルルマーク』
「低い看板」でめっちゃぐっと歌が迫ってきた。よくわからないものを見てるな……。
社会人になった先輩のネックレス静かに高そうな十八時
/乾遥香『10月生まれ』
妙に清々しい感じ、十八時が割と効いてるのかな。
大きいと思った魚より大きい人が水草を植え替えている
/川島結佳子『くくるす第1号』
マトリョーシカっぽい構造の歌ってたまに無性に味わいたくなる。
花といえば桜になるのは変だけど、花なんて桜しか知らないな
/青松輝『いちばん有名な夜の想像にそなえて』
なんか謎に強がっている(?)感がかわいい。
掘り炬燵の下で一世紀を生きた人たちという意味に転じた
/瀬口真司『いちばん有名な夜の想像にそなえて』
意味に転じる前の世界の複雑さを、思う。