川柳50句 ENGINE

文学フリマ東京で配布した川柳のテキストデータになります。

実物の紙に載せていた散文は当日手に取ってくれた人へのサービスということで、この記事には掲載しません。(というか意地悪なこと書いてて載せるのこわぽよです)

 

 

ENGINE    郡司和斗

 

判決の週はふうせんがよく浮かぶ

 

呼び止めて雪の修辞が誇らしい

 

霊がくしゃみ 読んでもらうための日記

 

ado全集その書き写しを烏の血

 

航法としりとり ときにおまじない

 

招かれてラバーストラップの孤独

 

知 なんで 求 パワーか…… くじ引き

 

安心のこむらがえりが四着か

 

しずかちゃんかな? ゲーミングししゃもかな?

 

浮気なら弦のちぎれる水曜でしょう

 

バイオリンみたいな服を呪いたい

 

毒舌ららら水浴びの犀

 

照れている張作霖の原子です

 

アトムなら虹の露出を止めるはず

 

十月は五月のような三月じゃん

 

だいじょうぶひとりは笑うハンバーグ

 

水の情その裏に金貨はあふれ

 

ポン・ママ・デ・パパ・リング・チョコ

 

あじさいの定式にしては幼い

 

つたなさが落葉を吹き上げるアプリ

 

赤ちゃんの粉が卒業式を飛ぶ

 

初任給から焼鮭を引いておく

 

よいジャムは先に殺しておかないと

 

話してみたらそれなりに小芥子

 

探してたクリアカラーの性欲だ

 

  〇

 

戸締りしても犬は回るぜ

 

警備の意味は星がつくるぜ

 

ラテン語で性器をあらわした樹だぜ

 

テレポートした白菜の差別だぜ

 

ひらめきは一万円の微笑だぜ

 

晴れている女嫌いの棺だぜ

 

ランダムに桃が出てくる机だぜ

 

おりがみの秩序が見える初冬だぜ

 

服部君のヒントは針だぜ

 

   〇

 

月蝕は登校拒否を拒否しつつ

 

愛してるハンドソープを嘗めながら

 

いつか降る灰を見つめる犬もいる

 

泣かれたら牡蠣の揚げようもない

 

佐藤はYES 東京スカイツリーはNO

 

パイプ椅子から滲み出る恋愛観

 

神っぽい口調が休日をひらく

 

暮れてきてグットッパーのクリスタル

 

バカがよ……の日もある日蝕がかゆい

 

火の比喩の必然性がもどかしい

 

あいつワシより都会の涙じゃね

 

溶岩と鳥の癒着がほほえましい

 

七度目のスライドショーを夜は切る

 

リズムさえあれば恐怖の出発地

 

けれどちいさい脳が伝記を閉じる)

 

噴水に沿わせると外科医の心