エア大学短歌バトル2020

郡司和斗です。角川短歌に載ってる大学短歌バトル2020の詠草を読んで、題ごとに好きな歌を引いていきたいと思います。

 

【家賃】

この店の家賃はいくつぶんだろう束ねてもらった花を受けとる/岩瀬花恵

家賃が6万とかだとして、6万ぶんの花はたくさんあってうれしい。

 

サフラン

真顔でも唇にちいさな角度 サフランライスに香りを探る/土谷映里

細かいところの詰め方が良い。あいてをよくみてるな~。

 

生活は日照雨のように サフランの雌蕊を集めた人をしらない/朝凪布衣

明るさと暗さが同時にやってくる凄み。

 

【痛】

ケロリンの桶でぶたれて痛かったそれからきちんと見える彗星/紺野藍

アニメのシーンっぽいところがかわいい。でもほのかにもの悲しさもある。

 

【クーポン】

オンライン・クーポンかざすつつがなさ濃い新月がそこまで来ている/山口在果

下の句のかっこよさ。ただ取り合わせとしては答え合わせすぎるか。

 

【羊】

みずをくださいつめたいのを真夜中に銀のコインを吸う羊の目/佐倉柚衣

初句、二句の崩し方が水への希求と合ってる。見立ても良い。日本じゃない感じもおもしろい。

 

【片思い】

木偏の木に隣りあう夏、いずれかが片思いしているような夏/狩峰隆希

上の句はよくあるレトリックだけど選択は合ってると思う。〈いずれかが〉のブラしかたがうまい。

 

【海牛】

海牛は海のつまさき くつしたの色の数ほどとりどりに這う/狩峰隆希

うーん。かわいい。

 

【魔】

木漏れ日も虹もじいちゃんのハンカチも全部魔法に見えていたよね/濱田恒輔

完成度というより、やりきってる感じが良い。微妙に感じる〈ふざけ〉の視線のおもしろさ。

 

【雅】

雅文体 知らない声で話すとき気づけば握らされる黒い花/山口在果

〈黒い花〉の抽象性と具体性のあいだをゆく捉え方が良い。3Dホログラムみたいでかっこいい。

 

【カレー】

食缶のカレー廊下にぶちまけた真夏の君が震えだすまで/阿部圭吾

あおざめていく君の顔、いいなー。ほむほむ的な抒情。

 

就活と院進、ふたり昨晩のカレーを和語にできぬまま食う/鈴木四季

「対」を三つ詰めたところのかっこよさ。

 

海軍のカレーライスを試食する僕らに夏が近づいてくる/穂村弘

海軍って言葉だけでわっと歌のフィールドを広がって、その日の天気とか湿度とか体調まで感じる。

 

 

優勝は……みんなです!(ゆとり)