鈴木ちはねの短歌

大雨のニュースを見てる 意味もなく必要以上に部屋を暗くして/鈴木ちはね「スイミング・スクール」

 

最初から鈴木さんの歌の話とは離れていくんだけど、こういう感じの文体の歌って、豚骨ラーメンと佐野ラーメンを同時に食べている気分になれる、すごい。意味内容を深く読みにいこうとすれば別にいくらでも読めるけど、基本的にはそんなに誘ってくる歌ではない、と思うんだよなー。そういう、流して読める歌である一面を持っているところが、佐野ラーメン感を醸し出しているんだと思うんだけど、どうなんでしょう。

 

テレビを観るときは部屋を明るくして離れて観てね。とアナウンスするようになったのはいつからなのだろう。ポリゴンショック説をよく聞くけれど、ほんとうのところはわからない。必要以上に部屋を暗くして、とあるけれど、意図的に電気を消している感じはあまりしない。暗い部屋でテレビをつけて、それから「意味もなく必要以上に部屋を暗くして」テレビを観ているなと気づいたような歌だと思う。大雨の予報ではなく、大雨のニュースだから、現在進行系で外は大雨なのだろう。それか少し過去。なんとなく野外も暗そうだ。弱い自然光が部屋に満ちる。絶妙な状況を捉えたなと思う。しみじみ良い。