『光と私語』 吉田恭大

ふだん北赤羽歌会でお世話になっている、吉田さんの第一歌集。


こういう感想はあまりよくないのかもしれないけれど、歌の打率が高い。各章のやりたいこともいぬのせなか座のレイアウトと合わさって明確でありつつ、読者が解釈で遊ぶ余地が残るくらいには曖昧だった。


あと、なにより装丁がすごい。これはほんとに毎日持ち歩きたくなるし、友だちに見せたくなる。


ひと月を鞄に入れたまま過ごす友達の余白の多い本/吉田恭大


なんならご飯に連れていって、一緒に写真を撮ったりもする。


出版おめでとうございます。


好きなやつ十首


人々がみんな帽子や手を振って見送るようなものに乗りたい

九月尽 ここがウィトネカなら君は帰っていいよ好きなところへ

いつまでも語彙のやさしい妹が犬の写真を送ってくれる

ここは冬、初めて知らされたのは駅、私を迎えに来たのは電車

花曇り あなたが山羊に餌をやる様をいつまでも覚えているだろう。

どこも明るい床だと思う 斎場の 百年生きたあとの葬儀の

その辺であなたが壁に手を這わせ、それから部屋が明るくなった

四月尽 ひとつめくれば噴水の誌運転日のあるカレンダー

真昼間の部屋のひとりのわたくしの振る舞いの素早い能力っぽさ

人のとなりで何度も目を覚ます夜の、アメリカの山火事、音のない